Yさんは、パソコンでの学習が得意で早く覚えることができます。パソコンを使っての算数で、まるやしかくなどの形当ての学習は、とても上手に答えることができます。しかし、「ボールはどんな形?」と聞くと、「足でける」と答えていました。「さんかくですか。しかくですか。」とヒントを出すと「まる」と答えられます。3回目には、よく考えて一度で答えられました。どうして「ボールは?」と聞かれたときに「足でける」と答えたのかとよくよく考えてみたら、学校で初めてボールを使ったのが、縦割り(1年生から6年生まで入っている)遊びでのキックベースボールだったことを思い出しました。そのとき、私が繰り返し「ボールは足でけるよ」と連呼していたのです。その後、1年生の体育で転がしドッジボールをしたのですが、見て分かっているので、「転がす」とか「投げる」ということばをあまり使っていませんでした。だから、「ボール=足でける」と覚えていたのでしょうね。ことばを覚え始める時は、強い印象になって記憶されるということだと分かりました。Yさんは、まだまだ純粋にことばが頭に入ります。正しい日本語を語り掛けたいと思いました。
また、「どんな味?」や「どうやって?」「どれ?」「なに?」などの質問は、難しく、答えられるようにがんばっています。
2年ぶりに音の聞こえの調整(マッチング)をして、今まで聞こえなかった〝虫の声”など、良く聞こえるようになったようです。
柿の実を見て、「これはなあに?」と質問したところ。「トマト」と答え、しばらく考えてから「柿!」と答えることができました。ろう学校で絵を描いてことばを覚えることによく使われるのがトマトだそうです。絵だけ、それも色が付いていないものを見るとホントに間違えそうです。ことばとして耳に入るのが人より少ない分、教えようとしてそういう間違えも起こります。なるべく、本物を見せてことばをいっぱい聞かせていこうと思います。
1年生が使うことばは、その年代で使いやすいことばであり、私一人ではとうていおしえることができないことばも多くあります。
通常学級の1年生に協力してもらい、耳で聞く音、目で見た様子、心で思うことなどを紙に書いてもらいました。そこで、「カンカン」「カサカサ」や「サワサワ」などの擬音語がたくさん出ました。Yさんには分かりづらいことばです。改めて、そういう当たり前に使う擬音語も日本語なんだと思いました。聞いてことばにして初めて自分のことばになるのですね。
シールを「ぺた、ぺた」と言いながら貼っていましたが、それも日本語、毎日毎時間ことばの数が増えています。