「あのね」と言えることは、言葉を理解してきたということ
人工内耳を入れて3年経ちました。
2年生の算数で、「ひょうとグラフ」という学習があります。動物や果物の数を表にして、〇を使ってグラフにするものです。学年が進むと、棒グラフや、折れ線グラフ、円グラフなどを学習します。その基礎のところです。
「表」や「グラフ」に表すことは目で見て分かることなので、Yさんにもすぐに理解できました。ところが、そのグラフを読み取るところになって、「さるは、うさぎより、なんびきおおいでしょう。」という問題で、「・・は・・よりいくつ多い」という言葉が分からず、四苦八苦していました。答えは2ひきなのですが、数が多いさるの数の5匹と答えるのでした。1年生の学習で、「ちがいはいくつ」というところで、数を比べて引き算することは何度もしていたのですが、グラフを読み取ることはまた別のことで、難しいのです。
何度か練習をして、引き算と分かったところで、突然「あのね」と言って、グラフの同じところまで手で隠して、「ここまでが同じで、これだけ多い」と自信たっぷりに説明をしてくれました。
「あのね」と言っているのを聞いたのは、この時(4/20)が初めてで、担任の私はとても驚きました。1年生の作文教材で、「せんせい、あのね」と書かせることがありますが、「あのね」という言葉は、言いたくて言いたくてたまらない感じです。「あのう、なんやったかなあ」と言うようになったのは、1年生の3学期で、そのつぶやきもYさんにとっては、言葉にして意思を伝える大事な言葉です。話したい気持ちをもっともっと引き出してあげたいなあと思いました。
春休みに、O市で人工内耳や補聴器を使用している人のための研修会がありました。Yさんのおうちの方と一緒に参加しました。その中で、「難聴児に国語を教えるには、英語を教えるように教える。つまり、「いつ」「どこで」「だれが」「どのように」「どうした」などの読み取り聞き取りが大切」という話がありました。要するに日本語の文法を教えるのがよいということでした。1年生の時はそのように1つ1つの言葉を取り上げて学習を進めてきました。また、それは、ていねいな話し方を先に教えていることでもありました。くだけた言い方や方言を覚えるには、同じ内容でも言い回しが変わることで、更に難しくなるからです。そこで、「あのね」が言えるようになってきたのは、言葉をよく理解してきたと言えると思います。